気候変動に関する取り組み

ソシオネクストグループは、当社の提供するSoCによって、お客様のもとでのGHG排出量の低減へ貢献し続けていくことが、サステナブルな社会の実現につながると考えています。グローバル市場をリードする主要なお客様との共同開発や、独自のマルチコア設計技術・低電力なAIエンジン/アクセラレータなどの活用による高性能なカスタムSoCの開発を通じて、お客様の製品のさらなる小型化、高集積化、低消費電力化を実現することで、お客様のイノベーションに貢献します。

2024年3月期は、当社グループの事業活動における気候変動の「リスク」と「機会」に関して以下のとおり認識し、シナリオ分析を通じた財務・事業インパクトの算出を行いました。

  • 戦略
  • シナリオ分析
  • 具体的な取り組み
  • 指標と目標

気候変動に関連する主なリスクと機会

区分 気候変動が当社に及ぼす影響 当社の対策
リスク 移行リスク 政策・法規制 省エネ・GHG排出量削減に向けた取り組み・施策によるコスト増
(カーボンプライシングなどのエネルギーコスト増など)。
グローバルな動向・法規制の変化を早期に捉えて、計画的に施策の検討・実行・評価。サプライチェーンGHG排出量の把握、パートナーへの削減の働きかけを継続的に実施。
技術 市場競争力維持・向上のための研究開発費増。
市場競争力維持・向上のための製造コスト増。
お客様、取引先と連携した低消費電力・省スペースな環境配慮型デバイスとソリューションの開発・提供、およびその開発プロセスの効率化。
市場・評判 環境配慮型デバイスを提供できないことによる売上減およびレピュテーションリスク。
規制による材料/電力など仕入れ価格のコスト増。
GHG排出量の低減に貢献する製品・サービスの開発・提供。
使用部材の見直し、再生可能エネルギーの導入検討によるGHG排出量の低減。
物理的リスク 急性 異常気象の激甚化による製造委託先の操業停止(当社の開発・物流も含む)。 製造委託先およびデータセンターなどの操業停止を想定した拠点分散化などの事業継続計画の定期的な見直し。
事業所、データセンターにおける電力の効率利用によるコスト削減可能性の検討。
慢性 水不足による製造委託先の操業停止。
気温上昇によるデータセンターなどの電力コスト増。
機会 資源の効率性 事業所、データセンターにおける資源(エネルギー、水)の効率利用によるコスト削減。 SoC開発効率化(独自のマルチコア設計技術、低電力なAIエンジン/アクセラレータの活用)によるコスト削減。
製品/サービス お客様の省エネ・GHG排出量削減への貢献に寄与する低消費電力製品を中心とした需要増。 低消費電力・省スペースな環境配慮型デバイスとソリューションの開発・提供。
市場 低消費電力技術を基盤とした新たなお客様獲得。 ADAS/AD/データセンター向けSoCを中心としたさらなる低消費電力化・小型化の実現による新たなお客様獲得。

シナリオ分析

区分 シナリオ/参考情報
期間

短期:〜2025年

中期:2026年〜2030年

長期:2031年〜2050年

インパクト

小:10億円以内

中:10億円超50億円以内

大:50億円超

※会計年度単位での影響額

シナリオ 1.5℃/2.0℃シナリオ:IEA (国際エネルギー機関) のSDS/NZE、IPCC (気候変動に関する政府間パネル) のRCP/ SSP1
シナリオ分析の進め方 当社グループは、IEAやIPCCなどが発表する「世界の平均気温がパリ協定で合意した2.0℃未満の上昇に抑えられる (一部1.5℃以内) 」シナリオでリスクと機会を分析しました。

[1.5℃/2.0℃シナリオにおける当社グループへの影響]

区分 気候変動が当社グループに及ぼす影響 事業活動に対する財務的インパクト
重要度*1 期間 影響項目 影響度*2
移行リスク 政策・法規制 省エネ・GHG排出量削減に向けた取り組み・施策によるコスト増(カーボンプライシングなどのエネルギーコスト増など)。 中・長期 コスト
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技術 市場競争力維持・向上のための研究開発費増。
市場競争力維持・向上のための製造コスト増。
短・中期 コスト
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市場・評判 お客様の需要変化による売上減。
環境配慮型デバイスを提供できないことによるレピュテーションリスク。
中・長期 売上
規制による材料/電力など仕入れ価格のコスト増。 中・長期 コスト
物理リスク 急性 異常気象の激甚化による製造委託先・データセンターの操業停止。 中・長期 売上
慢性 水不足による製造委託先の操業停止。 中・長期 売上
気温上昇によるデータセンターなどの電力コスト増。 中・長期 コスト
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機会 資源の効率性 事業所、データセンターにおける資源(エネルギー、水)の効率利用によるコスト削減。 中・長期 コスト
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製品/サービス お客様の省エネ・GHG排出量削減への貢献に寄与する低消費電力製品を中心とした需要増。 中・長期 売上
市場 低消費電力技術を基盤とした新たなお客様獲得。 中・長期 売上

*1:重要度「高」「中」「低」の程度は、気候関連のリスクと機会の「発生可能性」と「影響の程度」を勘案して評価しています。

*2:試算が困難であるリスク・機会の影響度については、各項目における定性評価に留め、「-」として表示しています。

リスクと機会に関する具体的な取り組み

近年、自動運転技術の発展や、生成系AIの市場利用が始まり、必要とされるコンピューティングパワーは指数関数的に増加していくと予測されており、消費電力をおさえ、GHG排出量を抑制することが社会的な課題となっています。当社グループでは、市場競争力の維持・向上およびエネルギーコスト増への対策として、開発段階から消費電力の低減に向けた取り組みを行っています。

(1)LSIの消費電力の削減低減に向けた取り組み

[微細化による消費電力の低減]

お客様からのLSIに対する消費電力低減の要求に応えるため、当社グループはプロセスノードの進化(微細化や低電圧化)を追求することで、低消費電力化の対応を進めています。
先端プロセスと既存プロセスにおける消費電力を比較すると、最先端の2nm/3nmプロセスは、28nmプロセスに対し、トランジスタあたりの消費電力は概ね1/10以下に低減されています。

[微細化/低電圧化による消費電力低減イメージ]

微細化/低電圧化による消費電力低減イメージ

[低消費電力化の実現に向けた設計技術]

当社グループのSoC設計は、お客様の低消費電力化に対する要望にお応えするために、多様な取り組みを行っています。低消費電力LSIを実現するためには、個々の技術だけではなく、さまざまな技術を組み合わせることが有効です(下図参照)。当社グループの設計環境「リファレンス・デザイン・フロー」は、さまざまな低消費電力化技術に対応しており、LSIの動作時と待機時双方の消費電力を削減できます。特に電源を制御することにより、低消費電力化を図る手法を体系化して開発しています。

また、当社グループはUPF/CPF*を採用することで、お客様の設計資産への変更を抑えつつ、低消費電力化設計を容易にしています。UPF/CPFの採用は、これまでは検証が非常に困難だった低消費電力化技術に対しても信頼性の高い設計を行うことを可能としています。

*:UPF(Unified Power Format)とは、IEEE Std. 1801として標準化された低消費電力設計指針を記述する標準仕様です。
CPF(Common Power Format)とは、Si2にて標準化された低消費電力設計指針を記述する標準仕様です。

[低消費電力化技術]

低消費電力化技術

[低消費電力化を可能とする設計/開発プロセスおよびパッケージ技術]

当社グループでは、お客様の製品における低消費電力化を実現するため、独自の開発フロー(「デザイン・レビュー」の仕組み)を策定し、運用しています。具体的には、お客様からの低電力要求仕様の聞き取りおよび仕様決定、要求を実現するテクノロジー選択(プロセスノード選択を含む)の提案、GHG排出量の低減などの環境負荷対策に積極的なFab・OSATの選定など、製品の製造から使用に至るさまざまな段階でのGHG排出量の削減に寄与しています。開発段階においては、低消費電力化および小型化を志向した論理・物理設計、並びにパッケージ設計(2.5D・3D・チップレット戦略など)に取り組んでおり、SoC製品を通したGHG排出量の削減に貢献しています。

以上のように、当社グループは、先端テクノロジー製品や、多様な低消費電力化技術を搭載した製品の開発・提供により、お客様のもとでの消費電力の削減に貢献しています。プロセスノード別の売上推移では、製品売上、NRE売上ともに先端テクノロジー製品(3nm~7nm)へのシフトが進んでいます。将来的な製品売上の先行指標と言えるNRE売上(2024年3月期)では、先端テクノロジー製品の比率が71%に達しています。

[売上の内訳(プロセスノード別)]

売上の内訳(プロセスノード別)

(2)小型化・省スペース化に向けた取り組み
当社グループは、LSIの小型化に伴う使用部材(鉱物資源、化石資源)の削減により、原材料から製品にいたる、製造プロセスでのエネルギー削減に貢献しています。また、LSIの小型化は、お客様の最終製品における小型化・省スペース化につながり、さらには機器動作時の発熱対策の容易性にもつながります。
これは、お客様における使用部材の削減や、製造プロセスでのエネルギー削減だけではなく、最終製品を使用する段階でのエネルギー削減(例えば、電気自動車の航続距離向上、データセンターの空調機負荷軽減など)により、サステナブルな社会の実現につながると考えています。
近年、2.5D・3D集積技術に代表されるチップレットが実用段階に入り、LSIの微細化限界に対するブレークスルーとして期待されています。当社グループは本技術の採用を積極的に進めることで、さらなる小型化・省スペース化、および低消費電力化を推進しています。

(3)データセンターにおける消費電力の削減に向けた取り組み
先端テクノロジー製品(2nm~7nm)への開発シフトによる高集積化の進展により、データセンターにおけるデータ処理量が増大し、消費電力は当社グループのGHG排出量(Scope1、2の合算値)の約半分を占めている状況であり、将来的な事業規模の拡大に合わせ、消費電力のさらなる増加が見込まれます。
当社グループでは、データセンターにおける消費電力の低減施策として、CPU/サーバーなどを中心に低消費電力型機器の導入・置き換えを順次進めています。
また、開発プロセス・開発手法などの改善による業務の効率化により、CPU/サーバーの稼働時間を抑制し、消費電力の低減に取り組んでいます。その他にも、データセンターの集約や、導入機器の水冷化へのシフトなどによる消費電力低減を進めています。

気候変動への対応に関する指標と目標

2024年3月期の当社グループのGHG排出量(Scope1*1、Scope2*2)は、8,198t-CO2となりました。前年比では、336t-CO2の削減となりました。また、売上高当たりのGHG排出量については、3.71t-CO2となり、前年比では、0.72t-CO2の削減となっております。

当社グループは、2050年までにGHG排出量(Scope1、Scope2)のカーボンニュートラルを目指しており、目標達成に向けて、引き続き削減施策の検討を行い、実行していきます。

*1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出 *2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

[GHG排出量]

2022年3月期
(t-CO2)
2023年3月期
(t-CO2)
2024年3月期
(t-CO2)
前年比
(t-CO2)
目標
Scope1 318 235 262 27 (111%) 2050年までにカーボンニュートラル達成
Scope2 6,971 8,299 7,936 △363 (96%)
合計 7,289 8,534 8,198 △336 (96%)

[売上高当たりのGHG排出量(1億円当たり)]

2022年3月期
(t-CO2)
2023年3月期
(t-CO2)
2024年3月期
(t-CO2)
前年比
(t-CO2)
Scope1、2 6.23 4.43 3.71 △0.72

[GHG排出量内訳]

温室効果ガス(GHG)排出量 グローバル実績 (t-CO2)
2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
Scope1 318 235 262
Scope2 マーケットベース 6,971 8,299 7,936
Scope 246,765 536,424 376,810
合計 254,054 544,958 385,008
Scope3詳細
Cat.1 購入した製品サービス 216,169 500,316 339,024
Cat.2 資本財 27,715 32,053 32,164
Cat.3 Scope1、2に含まれない燃料
およびエネルギー関連活動
1,269 1,416 1,370
Cat.4 輸送、配送 (上流) 895 1,150 1,136
Cat.5 事業から出る廃棄物 50 26 25
Cat.6 出張 200 953 2,267
Cat.7 雇用者の通勤 467 510 824
Cat.8 リース資産 (上流) 対象外
Cat.9 輸送、配送 (下流) Cat.4で算出のため非該当
Cat.10 販売した製品の加工 対象外
Cat.11 販売した製品の使用 対象外
Cat.12 販売した製品の廃棄 対象外
Cat.13 リース資産 (下流) 対象外
Cat.14 フランチャイズ 対象外
Cat.15 投資 対象外

[IFRS S2 開示要求項目]

開示項目 指標 グローバル実績 SASB
対照表
(コード)
2022年
3月期
2023年
3月期
2024年
3月期
温室効果ガス排出 (1)グローバルでの「Scope1」の総排出 318
t-CO2eq
235
t-CO2eq
262
t-CO2eq
TC-SC-110a.1
(2)ペルフルオロ化合物からの総排出 当社グループ製品には当該物質は含有されていないため、温室効果ガスの排出はありません。 TC-SC-110a.1
「Scope1」の排出を管理するための長期的および短期的な戦略または計画、排出削減目標並びにそれらの目標に対するパフォーマンスの分析についての説明 2050年までにGHG排出量 (Scope1、2) のカーボンニュートラルを目指しています。 TC-SC-110a.2
事業活動における
エネルギー管理
(1)エネルギー総消費量 176,530 GJ 197,892 GJ 165,944 GJ TC-SC-130a.1
(2)電力系統からの電気の割合 95.3% 96.4% 95.2%
(3)再生可能エネルギーの割合 0% 0% 0%
水管理 (1)総取水量
*2022年3月期は国内実績のみ
3,440m3 4,798m3 4,145m3 TC-SC-140a.1
(2)総消費水量、およびそれらの「ベースライン水ストレス」が「高い」または「極めて高い」地域の割合 水ストレスが「極めて高い」「高い」地域における使 用割合は、0%です。
製品ライフサイクル管理 IEC62474申告対象物質を含む製品から生じた売上高の割合 IEC62474申告対象物質を含む製品から生じた売 上高の割合は、0%です。
当社グループ製品では、IEC62474申告対象物質の閾値を超える使用、報告義務のある用途・物質の使用はありません。
TC-SC-410a.1
(1)サーバー、(2)デスクトップおよび(3)ラップトップのシステムレベルにおけるプロセッサのエネルギー効率 該当無し。 TC-SC-410a.2
総生産量
(自社所有の製造設備および製造委託契約をしている製造設備による総生産量を開示)
151,026千個 159,068千個 123,770千個 TC-SC-000.A
自社施設からの生産の割合 0% 0% 0% TC-SC-000.B
当社グループは製造工程を外部に委託しており、自社施設では生産を行っておりません。